旅の新定番“コト旅”で選ばれるお宿とは?

旅の新定番“コト旅”で選ばれるお宿とは?
 NPO法人自然体験温海コーディネットが手がけるサービス“Green Blue あつみ”は、温海地域ならではの自然や文化が体験できるサービスとして、県内外からの観光客に人気急上昇中です。そんななか、利用した観光客へアンケートを実施したところ興味深い一つのデータが浮かび上がってきました。それは、宿泊先です。
なんと、6割に迫るお客様が「ココに泊まっている」という回答(※当団体調べ)をしたのです。そのお宿の名は、「高見屋別邸 久遠(くおん)」。
 こちらは創業約300年の老舗旅館グループ高見屋が2011年にオープンさせた温泉宿で、あつみ温泉では最も新しいお宿になります。「なぜ、体験する観光客のお宿として久遠が選ばれるのか?」その理由を探りに高橋支配人へ取材を行ってきました。

もう終わり?
お宿だけで満足してもらう時代

―どうして、温海地域で体験する方は久遠さんに宿泊される方が多いのだと思いますか?

当館(久遠)の公式サイトでは“Green Blue あつみ”さんの写真を多く使わせてもらったり、体験を紹介しているからだと思います。
(自然・文化体験は)地域がどんな場所なのかをお客様にイメージしてもらいやすいんです。それと、お客様を地域の様々な場所に行ってもらいたいとも思っています。

―久遠さんでは積極的に外部と連携していますが、それはどうしてでしょうか?

もはや、宿だけでお客様を満足させる時代ではなくなったんだと思います。
食事やお風呂だけではリピーターに繋がりづらいですし、日々、切磋琢磨しているこの業界で差別化していくのには難しい部分があるんだと思います。
でも、それを補うのが非日常的なものだったりするんだと思うんですよね。温海ならではの自然や文化を体験することで、(いい意味で)古いものや不便なものに触れることはお客様にとって特別な思い出になるんだと思います。
そして、せっかく、そういったサービスを用意してもらっているのならば活用したいですし、その情報発信を(宿が)しなければならないとも思うんです。もちろん、“Green Blue あつみ”さんのようなしっかりとプログラムされたアクティビティと実施体制があってこそですが。

あいまいさが招く落とし穴
気持ちよく過ごしてもらうことが最重要

―久遠さんのお食事についてお話を聞かせてください。

当館(久遠)では、地元のものをなるべく使うのはもちろん、手間をかけて提供することを心がけています。それは、調理方法だけではなく食材の保存方法までも含みます。
そして、ここでしか食べられない、お客様にとっては珍しいと感じてくれるものを提供することで、旅行気分を高める工夫をしています。
また、連泊のお客様がいらっしゃれば朝食バイキングのメニューを少し差し替えたり、「昨日とは違うんだぁ」とお客様に感じていただけるようにもしています。

―接客についてはいかがですか?

スタッフには相手の空気とか、気持ちを察して接する力を持ってもらうことを大事にしています。例えば、都会的な接客をすると仰々しくなる場合は地方らしい雰囲気を出すとか、小さなお子様を連れたご家族の場合は、若いスタッフではなく子育て経験のあるスタッフが率先して接客したりなど、『これだ』と決めつけるのではなく、お客様に合わせた形で接客するように心がけています。
それと、中途半端であいまいな接客はしないようにしています。嫌な気持ちを吐き出さずに持ち帰られるようだと、その間モヤモヤしてせっかくの旅が台無しになってしまいます。お客様には、良いも悪いも言ってもらえるような接客をしようと。
だからこそ、我々もできることできないことをしっかりと理由を添えて説明できるように心がけています。

地域の魅力にもっと触れてほしい

―最後に久遠さんの今後の展望を教えてください。

長期滞在型の個人のお客様をもっと増やしていきたいです。どうしても一泊だと限られた時間のなかで周辺の有名観光名所を訪れて、という形になってしまいます。もちろん、それもいいことですが、もう一泊二泊と滞在できるお客様が、ゆっくりと様々な場所を訪れ、この土地の魅力に触れ、理解を深めていただけるような旅を提案したいです。

そのためには、きっかけを作ることが必要になってきます。今年、試験的に長期滞在のお客様の初日に、地元のガイド(鶴岡ふうどガイド)からオススメの場所やスポットをプレゼンテーションしてもらう機会を作り、お客様に好評でした。もっと良くしていくためには、地域との繋がりを大事にしていかなければならないと思っています。

あとがき

インタビューの中でコンセプトに触れた部分がありました。
それに対して支配人はこう答えています。
「みなさんにそれを言われるんですけど、コンセプトというコンセプトは特に設定していないんです…それにコンセプトを設定してお客様をそれにハメようとは思ってないんですよ。」あたかもコンセプトが全くないような言葉に、正直驚きました。

しかし、インタビューを進めていくなかでわかったことがあります。
それは、久遠というお宿は地域の中にあり、地域と共に魅力を高めていこうとしていることです。

「なぜ、体験するお客様のお宿として久遠が選ばれるのか?」

その真の理由は、久遠が“地域の魅力に触れてほしい”という明確な想いを持ち、それを実現するための努力を惜しまず、チャンレジを続けているからではないでしょうか。

高見屋別邸 久遠
山形県鶴岡市湯温海湯之尻83-3
0235-43-4119
http://atsumionsen-kuon.com/

取材・文:冨樫 繁朋(羽越のデザイン)
画像提供:ジッカデザイン 他 ※画像はイメージです

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