東京大学を休学し、温海地域に約半年間暮らしていた、高石桜さんにクリアくらげカヤック&ウミのネイチャリングの体験記を書いていただきました。ぜひご一読ください。
透明な海を漂う
鼠ヶ関(ねずがせき)は、鶴岡市温海(あつみ)地域の西端にある小さな漁師町。集落の真ん中に山形県と新潟県の県境があり、また民宿の門に昔の水族館の看板が残っていたりと、どこか懐かしくてユニークな家並みが特徴的です。
でも鼠ヶ関の一番の魅力は、人びとの生活を支えてきた海。カレイやタラ、カキといった四季折々の海の幸を恵んでくれる鼠ヶ関の海は、季節によって多様な姿をみせます。特に春から夏にかけては明るい陽射しのもと海の色はいっそう鮮やかになり、水辺はヨットやシーカヤックを楽しむ人たちでにぎやかになります。
そんな鼠ヶ関の海に、この夏新しいカヤックが仲間入りしたとのこと。山形県ではここでしか乗れないという透明な船体は、名付けて「クリアくらげカヤック」!
今回は鼠ヶ関の海を存分に味わえる「鼠ヶ関クリアくらげカヤック&ウミのネイチャリング体験」に行ってきました!
くらげのようなカヤックで海を探索
鼠ヶ関の海を案内してくれるのは、「NPO法人自然体験温海コーディネット」の方々。温海地域の豊かな自然を舞台に、様々な自然体験や教育プログラムを展開しています。今回はキャプテン冨樫さんとジョニーさんのおふたりがサポートしてくれました。
緑深い山々を背にして砂浜が広がる鼠ヶ関の浜辺。平日の昼間は観光客もそれほど多くなく、プライベートビーチのようなのんびりした時間が流れます。とってもいいお天気!
魚のエサをカヤックに乗せて、ゆっくりと海へ漕ぎ出します。パドルの操作は最初はなかなか難しく、左に傾いたカヤックを右に進めようと頑張って漕ぐと、船体が一気に右に回転してしまいます。同乗するパートナーと息を合わせて、なんとかカヤックを進めていきます。
さっそく「こっちに魚いるよ!」と先導のジョニーさん。そちらに向かってみると、カヤックの真下を水玉模様の魚の群れが通っていきました!フグの子どもたちだそうです。特に岸近くは海水も澄んでいて、透明な船体越しに海藻や岩々のようすを眺めることができます。
エサをうまく使って魚たちをおびき寄せたり、水中メガネで海中をのぞき込んだりと、観察の作戦を立てるのも楽しい時間です。この日はアジの群れやヒトデも見ることができました。
ほかにもさまざまな魚や貝の種類について話してくれたキャプテン冨樫さんとジョニーさん。温海地域で生まれ育った気さくなおふたりは、周辺の自然や歴史についても庄内弁でたくさん教えてくれますよ!
五感で感じる、ウミ
カヤックの操作にも慣れて水中から顔を上げると、抜けるような青空と波のかがやきに驚かされました。沖に向かって漕ぎ進めると水平線がますます広がり、雄大な海の自然に包まれるような安らぎを感じます。
灯台をめざし、さらにパドルを速めます。沖向こうに見えるのは、新潟県の粟島。その横を大きな船が通っていきます。船からやってきた波で、ゆらりと揺れる船体。つかの間パドルを置いて、そのままゆらゆらに身をあずけます。
ヨガの経験豊富なキャプテン冨樫さんの声に導かれて、上半身をゆっくりと動かします。目をつぶって、深呼吸。太陽に向かって、ぐうっと背伸びをして。そのまま腕を下ろして、水面に指先をつけて。
思い切り伸ばした身体に潮の香りと冷たさが深く沁みて、まるで潮風の一部になったよう。開いた目には、空と海の色がさらに鮮やかに映ります。
いろいろな海辺の表情を堪能
岸辺へと漕いでいくと、突然目の前に飛び跳ねる魚が!さらに頭上からウミネコがすっと降りてきて、間近で魚をさらっていきます。この日は飛ぶ魚もウミネコもたくさん見られ、目の前で生態系が動いていくダイナミックな光景を見ることができました。
陸近くに休みに帰るウミネコの鳴き声が響き、夕暮れ時を知らせます。名残惜しく感じながらも浜に降り立って海を振り返ると、傾いた陽差しはすっかりオレンジ色になっていました。海に沈んでいく夕陽は、日本海側ならではの風景です。青とオレンジのグラデーションがまるで鏡のように海面に映り、灯台のシルエットが浮かび上がる、幻想的な景色が広がっていました。
海のうつろいに五感をまかせ、無心になれるひととき。波の上でのリラクゼーション体験を、鼠ヶ関へぜひ味わいに来てください。
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